FIXER -WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING-
FIXER -WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING- - 2016.2.24/32位/0.4万枚
【収録曲】
01.ひらり -SAKURA-
02.FIXER -WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING- (Single Version)
03.ひらり -SAKURA- (Instrumental)
04.FIXER -WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING- (Single Version Instrumental)

それにしても明菜さま、最近よく働きますね。アルバム出てから間髪入れずにすぐ新譜、って事態にあまり慣れていないもので(――我が心の三歌姫である中森明菜、安室奈美恵、宇多田ヒカルって皆さん揃って寡作なものですから)ちょっと贅沢な気分。若く旬なアーティストだって今は結構リリースペース落としてますからね。
そんなわけでマスメディアの煽り報道合戦も完全スルー、ひたすらマイペースに着々と活動を続ける中森明菜、めでたくデビュー35年目(だよね?)を迎える2016年の第一弾シングル「FIXER -WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING-」が届けられました。一応最新アルバム「FIXER」からのリカットシングルという名目だけど、カップリングには――ってか、結局これどういう扱いなんです?両A面シングルってことでいいの?でもジャケットは全面「FIXER」単独推しなので、メインはやはり「FIXER」の方なの?ああ、ややこし。――ってのはさておき、初(?)の桜ソング、ポルノグラフィティの新藤晴一氏の作詞提供による新曲「ひらり -SAKURA-」が収められています。
――ぶっちゃけた話、桜ソングでしかもタイトルが「ひらり」なんて言うもんだから、また「雨月」系のまったり歌謡バラードなのかな、それじゃあ話すことないし(をい)、ここは「FIXER」のシングルバージョンに望みを託そう、なんて思っていたのですが……え゛ーっとですね、色んな意味で語るネタは、結構あったかな。結論から先に言わせていただくと今回のシングル、自分は「FIXER -WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING-」推しの人です。
――まあ、立ち話もなんですから上がってゆっくりお話ししましょう、ってわけで本題に入ります。

〇「ひらり -SAKURA-」
――驚きのポルノグラフィティ・新藤晴一氏による作詞提供。でも冷静に考えてみると「レーベルの垣根を越えた異色のコラボ」っていうほどではないな。そもそも作曲の宗本康兵氏が、武部聡志御大を始め度々中森明菜プロジェクトに関わっているハーフトーンミュージック所属なわけで、最新アルバム「FIXER」にも曲を提供してくれて、それでもってポルノのサウンドプロデュースやライブサポートを手掛けた縁で大の明菜ファンであるという新藤さんに声をかけて、という流れでしょうか。だから明菜さまと新藤さん(=ポルノグラフィティ)に全くもって繋がりがないわけではなかった、と。友達のお父さんの会社の同僚の親戚、くらいは離れてますがね。まあ、それはさておき。肝心なのは出来上がった楽曲。
――良い意味で、良い意味でですよ(大事なことなので二回云々)、なんか全然新曲って感じがしないなって。まず、ひらりっていうより猛吹雪ですねこれ。イントロなしでいきなり「すう……」と息を吸って「薄い紅の河は流れて」と艶やかに歌い出し、そのまま潔いほどに情熱的で分かりやすく派手に煽りまくるバックトラックと、21世紀版「美・サイレント」だと言わんばかりに歌謡感満載のメロディ、極めつけに「ひらりいぃぃぃぃ」「桜あぁぁぁぁ」という伝家の宝刀「明菜ビブラート」炸裂。なるほど、明らかに「昔は明菜ちゃん好きだったなあ」というリスナー層狙い撃ちの、いかにもカラオケで歌いやすそうで絶妙にオラついた「歌謡曲」だな。ハイエナジーで最後まで全力疾走なグルーヴ感はちょっとアニソン風でもあり(――ダッダッダッダッという過剰なオケヒットから雪崩れ込むように「散るがさだめならば~」とサビに突入する部分の暑苦しさね、銀魂のオープニングにでもいかかでしょう)、歌謡曲の中森明菜というイメージを全否定、洋楽方面にアプローチした(――しかし実はこれが本筋である)前作「unfixable」や次に紹介する「FIXER」と比べ、なぜ今になってと驚くほどに正攻法で、これを明菜さまが外すわけがないですよ、ええ。こういう曲で失敗したらもう、中森明菜という歌手は終わりだといっても過言ではない。明菜さまなら茶碗洗いながらでも歌いこなせるだろう、って曲ですよ。

――でも違うんだあ。僕の好きな中森明菜はこれじゃないんだあ、などと小僧が申しております。僕の好きな明菜さまは「不思議」とか「Resonancia」とか「unfixable」みたいな、発想が突飛すぎて大多数には意味の分からんことを、平然とやってのけた後にしれっとしてるような明菜さまなんだよおっ――。
「80年代を彷彿とさせる曲調で、いよいよ完全復活!!」――なんて喜ぶリスナーがいる一方で、こんなことを言い出す輩もいるんだから、つくづく中途半端な信者ってのは迷惑な存在だな、と自分でも思います。でもしゃーない、そんな感じで今回の新曲は、自分としてはそんなにヒットじゃなかった。
でも世間の大半の中森明菜のイメージって、ハードッコイな「DESIRE」だったり、アモーレェェアァァ~の三段跳びな「ミ・アモーレ」だったり、飾りじゃねえんだよはっはーんな「飾りじゃないのよ涙は」だったりするわけで、そうした「歌謡曲で、迫力満点な低音ボーカルで、ビブラート全開で、派手に決めまくり」という80年代の(シングル曲での)中森明菜よ再び、なんてそれこそ一昨年の紅白出場段階から延々言われ続けてきたわけで。最新アルバム「FIXER」はそうした旧来のファンやライトリスナーを納得させるような楽曲、でも今の私もいいでしょうという挑戦的な楽曲、それらが絶妙な按配で構成されて見事に高評価を得たわけだし(――もちろん自分もアルバム「FIXER」は大好き)、群がる鯉に餌をやるじゃないけど、定期的にこういういかにも中森明菜でございみたいな曲があってもいいよね、確かに。

終わり。いや待て、一番話題の「ポルノフラフィティ・新藤晴一氏とのコラボ」な歌詞について語ってない。でもほら、逃げるわけじゃないけど、自分は明菜検定初級レベルなペーペー信者ですから。詞の解釈とか、歌の世界に入り込む中森明菜の女優魂云々は、他の明菜ファンに任せます(――実際はまだ全然咀嚼しきれてないから語りようがない、というのはここだけの話)。でも、新藤さんが本当に明菜ファンだということは分かる。多分「落花流水」の世界を下敷きにしたんだろうけど、「散るがさだめならば河に落ちゆけ桜よ/地に落ちて汚れてはいけないの」という部分が決定的に違いますね。明菜さまは別に地面に落ちて汚れることは厭わない気がするんですが、貴女にはこうあってほしい、みたいなものが伝わるかと。

――もうちょい聴き込んだら印象変わるかもですが、現状はこんな感じで。長々と書いたら(すでに長い)飽きられちゃうからね。はい次。

〇「FIXER -WHILE WOMEN ARE SLEEPING-」※シングルバージョン
――いえーい、信じてたよお、明菜さまあ。やっぱり本命はこっちですよねえ。みんな待ってた歌謡曲の明菜ちゃん、はあくまでカップリングだから、ファンサービスだから。メインはあくまでこっちだから。と言って(いたかは分からない)この曲を単独推しした明菜さまは偉い。だから好き。
アルバム「FIXER」の表題曲にして、映画「女が眠る時」のイメージソング。アルバムバージョンはハイエナジーな直球EDM仕様で、オープニングナンバーに相応しいイケイケムードであれはあれで素晴らしかったけど、シングルバージョンのこちらはコーラスワークやサウンドエフェクトをやり直し、幻想的かつ荘厳な雰囲気(――個人的にはコールドプレイの「A Sky Full Of Stars」を連想しましたよ)に様変わり。ただのロングバージョンだと思うなかれ。何が良いかって色々あるけど、例えばアルバムバージョンは「In the shade of light~」の転調がちょっとあざといかなって個人的に思っていたんですが、シングルバージョンは明菜さまの「Fixer.」という囁きを効果的にリフレインさせることで、この部分が実に自然に繋がっているんですね(――裏を返せば、ハイテンションさは薄れたというわけですが)。あとは平歌の「You are You are You are always will~」という部分に厚いコーラスがかかってくるのも素晴らしすぎるし、ラストを「Fixer.」という声と同時に唐突にカットアウトさせるのも実にカッコいい。インストを聴けば分かる、何か特別にアレンジが変わってるわけじゃないのに、ここまで印象の違う曲に仕上げるとは。これだ、これを待っていたのだ。前作の「unfixable」といい、的確にツボを突いてきますな。

EDMというジャンル自体が斜陽に差し掛かりつつあるので、次からはまた違った展開を見せてくれるんでしょうが、復帰第一弾の「Rojo -Tierra-」以来の路線の集大成とも呼べる仕上がりで、個人的には大満足。そうですよ、明菜さまは何も今更カラオケ映えするような曲を歌う必要はないんですよ。あなたさまの歌謡曲魂は過去にリリースした楽曲と「歌姫」シリーズで存分に発揮していただくとして、今後もこうして自分のやりたい音楽を突き詰めていって、好き放題アウトプットしていってほしい。カラオケで歌えないだの、声が出てないだの、昔みたいな歌謡曲じゃないだの言う人なんて、大体ベスト盤くらいしか聞いてないんだから。しっかりアルバムを聴いていれば、こういう曲こそ彼女の本懐であると分かるはず(――大体、あの当時「不思議」とか「Cross My Palm」とか聞いてた全国数十万のリスナーはどこへ行ったのさ)。
もちろん、歌謡曲路線を否定してるわけじゃありませんよ。寧ろそのように、歌いこなせる世界の振幅がえらく広い明菜さまだからこそ、期待してるし好きになったわけだし(――それでなきゃキャリア30年越えのベテラン歌手を今更追いかけたりしませんよ)。

そんなわけで色々ぶつくさ言ったけど、中森明菜のニューシングル「FIXER -WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING-」みんな、聴いてくれよな!
強引だけど、以上。
 
ひらり -SAKURA-≪8/10点≫
FIXER -WHILE WOMEN ARE SLEEPING- Single Version≪10/10点≫

M1.【作詞:新藤晴一/作曲:宗本康兵/編曲:宗本康兵・森田"Johnny"貴裕】
M2.【作詞/作曲/編曲:miran・Dream Productions・Brian Lee】